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2006年7月21日 (金)

モノボール

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正式には「アルカスイス モノボールB1クイック(ARCA-SWISS Monoball B1 Quick)」と言いいます。

アルカスイスはその名が示すとおりスイスのカメラメーカーで、主にブローニーやシートフィルムを使用するビューカメラを製造しています。モノボールはそんな自社製の中判・大判カメラを載せるために開発された高精度な自由雲台です。自由雲台と言うと自在なフレーミングの反面、ロックを緩めた際にカックンと動いてしまい、どこか心許ないというイメージがあるかと思います。実際一般的な自由雲台では「緩める」か「固定する」かの何れかしか選択の余地はないのが実情ですが、モノボールはそんな自由雲台の既成概念を払拭するいくつかの特徴を備えているのです。

一つ目はその高い工作精度がもたらす精密且つ滑らかな操作感で、二つ目は万力の如く強力に締め付ける固定力です。モノボールBシリーズは何れもマグネシウム合金製で、写真のB1クイックは自重780gと小型の割に耐荷重は40kgという堅牢さを誇ります。直径5cmの大型のボールを下側からお椀型のプレートで押し上げて固定する構造で、そのボール自体も縦方向にやや卵形をしているので、傾けるに連れて自然とフリクションが増し、締め付けトルクによって微妙なテンションが掛かるようになっています。もちろんテンションも荷重に合わせて自由に調節することができます。しかもその滑らかな動作の実現にグリスの類を一切使用していないため、基本的にメンテナンスフリーとなっています。

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写真は締め付け(ロック)を行うノブで、ノブ側面にあるテンション調節ノブで必要な調整を行った後、内側の数字の書かれたリング(あくまでも目安)を動かすことで好みの位置を決められます。

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モノボールのもう一つの特徴に、アルカスタイルと呼ばれる汎用のクイックリリースシステムがあります。古くはフォーバ(FOBA)やジッツオ(GITZO)、最近ではウィンバリー(Wimberley)が同タイプのシステムを採用しています。他メーカーでもクイックリリースシステム..日本ではクイックシューと言うほうが通りがいい..を用意しているところがありますが、概ねサイズや形が限られているのと、バネ仕掛けの固定方法によるものが多く、長期間使用するには耐久性に疑問符が付きます。その点アルカスタイルは単純なクランプ式のため、固定力も強く故障しづらい構造になっています。

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写真はキヤノンのEF500/4L IS(重量3.8kg)を載せているところ。ボディ(EOS-1V + パワードライブ・ブースター)込みで重さ約5.3kgですが、その運用には何の問題もありません。自由雲台に超望遠レンズを載せる利点は、振り回す際に支点一つで全方位フリーになることです。それがモノボールならば、締め付けノブを緩め適度にテンションを効かせつつ、手持ち撮影の要領で重い超望遠レンズを安定して振り回すことができるのです。そしてフレーミングを固定する場合も、パーン棒に手を延ばすことなく少ない手の動きでガッチリ固定することができます。

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不整地にて車をブラインド代わりに使用する場合、カーウィンドマウントアダプターとの組合せで自由な撮影ポジションを得られます。

私が最初にモノボールの存在を知ったのは、アラスカで取材に訪れていたナショナル・ジオグラフィックのカメラマンに遭った時です。当時まだ3Wayの雲台(ハスキー製)を使用していた私は、コンパクトで流麗なデザインの自由雲台に600mmの超望遠レンズが載っているのを見て驚いたのを憶えています。その後、何回か件のカメラマン氏に遭ううちに実際にモノボール..確かB1の前モデル..に触らせてもらう機会を得ましたが、その滑らかな操作感且つ強靱な固定力にハンマーで殴られたような衝撃を憶えました(笑)。

元々私は三脚に乗せて撮影するのは好きではなく、どちらかと言えば手持ち撮影派ですが、低速シャッター時や超望遠レンズ使用ともなるとそうも言っていられず、必要に迫られて3Way雲台付きの三脚を使用していました。その当時3Wayの雲台で何が不満かと言えば、「野外フィールドは不整地である(水平とは限らない)」「締め付けた時にフレーミングがずれる」「携行性が良くない(嵩張る)」が挙げられますが、モノボールB1はその何れをも一度に解決してくれたわけです。

余談..今でこそモノボールを使っている人をそこそこ見掛けるようになりましたが、私が導入した10年位前はその存在自体ほとんど知られてなく、日本での輸入元(当時はKFC..ケンタッキーフライドチキンではない)を調べて問い合わせをしたほどです。実際に店頭で購入する際も、取扱商品であるにもかかわらず店員にモノボールの名称が通じず(そもそもアルカスイスを知らない)、その場でわざわざKFCに連絡させたほどです(苦笑)。個人輸入の手もありましたが、何せ初物で万一の故障時のリスクを考えると、多少高くても輸入代理店を通した方が良いと考えました。

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モノボールの存在を知りそしてそれを使うようになった今、もう二度とあの使いづらい不自由雲台..もとい3Way雲台には戻ることはないでしょう。今やモノボールは私の撮影にはなくてはならない重要なアウトフィットの一つなのです。

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