盛況!トッカリレストラン
野付半島から根室半島にかけての根室海峡沿岸にも、羅臼の沿岸同様に近年は流氷の接岸が見られません。先日の記事でも触れましたが、流氷自体が少ないことと風向きの影響もあって、東よりの国後島に近い海域に流れていくことが多いようです。上の写真は一昨日のものですが、今年は標津の海岸線から帯状になって流れる流氷を確認することができました。背景の陸地は国後島になります。
東よりの風が吹けば久しぶりの接岸もあるかと期待しているのですが、こればかりは風任せなので如何ともしがたいですね。それでもポツポツと流氷の欠片が流れて付いてはいます。
例のトッカリもこの数日の間に随分と食べられてしまいました。遠目にも骨と皮だけになっているのが判りますね。今日も朝から千客万来で引きも切らず、入れ替わり立ち替わりオオワシが取り付いては啄んでいきます。
やがて雪が降り出し視界が悪くなってきましたが、それでもオオワシの行列は途切れません。私の観察中もっとも多かった時で一度に10羽が集っていましたが、そうなると押すな押すな大騒ぎが始まります。オオワシはなまじ図体がでかいだけに、やれ肩がぶつかっただの、お前邪魔だそこ退けだの、それは俺の見付けた肉片だのと、残り少ない肉片を巡って小競り合いが絶えません。もうこなるとカラスは近づくこともできず、オオワシ達が去るのをひたすら周囲で待つことになります。引き上げ間際に周辺に点在するワシをカウントしたところ、オオワシ68羽、オジロワシ24羽、合わせて92羽でした。
こちらはビデオからの切り出し映像。ビューファー越しではありますが、降雪をついて皮を剥ぐ音や肉を切り裂く音が聞こえてきそうです。
トッカリレストランの賑わいをよそに、周辺にも多数のワシが集まっていましたが、そんな時ちょっとしたハプニング発生。流氷にパーチしようと飛来したオオワシ(写真左から2羽目)に驚いた別のオオワシが、何を慌てたのか足を滑らせてそのまま海へ落水してしまいました。一番驚いたのは当の本人のようで、しばらくは海面に浮いて途方に暮れていましたが、ここから驚いたのは私のほうで、何とオオワシは羽をオールのように動かしながら海面を泳ぐではないですか。そしてそのまま写真奥の流氷まで泳いで近づいて、流氷上に無事はい上がったのです。漁船の水揚げをかすめようとするうちに落水する例はたまに聞きますが、まさか流氷から足を滑らせて落ちる間抜けをこの目で見ようとは(苦笑)。落ちたワシには申し訳ないですが、落水後すぐにビデオに切り換えたので、なかなか興味深い面白い映像を撮らせてもらいました。
今日の撮影風景。車をブラインド代わりにしています。
午後から天気が悪くなるという話だったので、撮影はお昼で切り上げ、根北峠が吹雪かないうちにオホーツク海側に移動。ワシ絡みの所用で斜里の知床博物館に寄った後、知床プリンスの風呂で汗を流してから、これまた居候しているウトロのアジトに6日ぶりに帰還しました。荷物をひもときつつニュースを眺めていると、関東では春一番が吹いたとか。道内も今晩から明日の朝にかけて、風雪が強くなるようです。
EOS-1D Mk3(EF500/4L IS)
XL H1(EF400/5.6L)
Caplio R6
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コメント
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群れてるオオワシは猛禽類っぽくないですねぇ。特に海に浮いているとカモの仲間ですね・・。
関東では昨日の午後から大荒れの天気でした。昨日は横浜まで行ったのですが列車のダイヤが乱れ帰れなくなるかと思いました。幸い私は在来線と新幹線をうまく組み合わせ、大きな影響なく帰れましたが、東北新幹線は動かなくなり、そちら方面の方々は大変だったようです。
そして今朝、起きてみるとまさかの大雪(4cm位 前橋市です)。しかも吹雪でした。現在でも雪が水平に舞っています。屋根付の車庫に入れた車も真っ白でした。今回はいつもの雪のパターンと違い、強い冬型の気圧配置からもたらされたようで、まるで北海道か雪山かのような雪質でした。BigDipperさんちはかなりの雪でしょうね。そろそろ北海道も荒れてくるかと思います。旅の安全お祈りします。
投稿: densuke | 2008年2月24日 (日) 09:56
BigDipperさんの今日のお食事(酒肴)はなんでしょうか。
しっかりとカロリーつけて低気圧を乗り切っていただきたいと、応援しています。
出てくる地名や固有名詞は、意外に知っているのですが、実際の位置関係や雰囲気は全然知りませんので、お話しを追うのに必死?です(爆)。
いやいや、別に必死、というほどでもないんですが、敬愛する藤沢周平氏は、その著書で必死すなわち生くるなり、と説いておられますし、ここはひとつ、心という字にタスキをかけて、神妙にコメつけたいと思います。
だいたい、流氷はどこら辺で作られるんだろう、とか、どっちからどっちに向けて流れてるんだろう、とか、なんで流氷は知床半島周辺に溜まるのか、なんでワシと流氷は密接に結びついてるんだ、などなどなどなど、大前提の部分がわかっていなかったので、結構タイヘンです。それでも追ってみるのが面白いので、せっせと自分なりに資料をナナメ読みしていたら、ぼちぼちわかりかけてきました。
Feb20アップの画像から、周辺の雰囲気ががらりと変わりましたね。
レストランの利用客は、オオワシ、オジロ、ワタリガラスだけなのでしょうか。カニや昆虫などの影響は少なそうですし。丸々3日間以上そこにあるわけでしょう?それなのに、テイクアウトを試みる動物はいない、ということでしょうか。少なくとも画像からは、皮や背骨、頭部の位置関係が整然としているように見え、荒らしや散乱の気配が感じられませんね。ずいぶんとマナーのいいレストランです。キタキツネ、野犬(放し飼いの犬)などは?たまたまなのかな?それともそういったことはないのが、そこいらではフツウなのかな??
ところで、レストランのコースの内容はいかがでしょうか。
モツやおめめを前菜に、そしてメインにお肉、骨と皮はキレイに残して、というのが一般的なマナーのようにも思えますが、なぜかお顔だけが見事なまでに骨だけになってますね。食べられちゃった、というよりも、おめめなんかを頂いているときに、つるん、と剥かれちゃったのかなあ?構造上、ありうるかも。
あっと、ところで、最後の撮影風景のような状況絵は、タイヘンに助かります。
この絵だけで、ご飯どんぶり2杯食えそうです。
投稿: joshi | 2008年2月24日 (日) 10:28
暴風雪に閉じこめられているので、
今日はコメント返事が早いです(笑)。
【densukeさん】
> 群れてるオオワシは猛禽類っぽくないですねぇ。
表現者としての狙いはまさにそこにあります。
皆が常識としてイメージしているものの打破とでも言いましょうか。
一般的に猛禽類..特に大型のワシ..は神格化される傾向にあります。
王家の紋章に使われるように力強さの象徴というべきか。
しかし、大型になればなるほど餌の確保は難しくなるわけで、
勢いスカベンジャーとしての役割を担うことになるのです。
すなわちご覧頂いてるシーンは扱く当然のものであり、
それこそが海ワシ達の越冬生態なのです。
単独で生き餌を狩る->格好良く猛禽らしい
集団で腐肉をあさる->格好悪く猛禽らしくない
これらは人が勝手に考え出した、
いわば猛禽類に対する幻想に過ぎないと言うことです。
> BigDipperさんちはかなりの雪でしょうね。
倅から電話があって、家の玄関が開かないので、
勝手口から出入りしているようです(笑)。
吹きだまりは1mほど積み増したとも言ってました。
> そろそろ北海道も荒れてくるかと思います。旅の安全お祈りします。
ご心配ありがとうございます。
もうすでに大荒れで一歩も外に出られません。
【joshiさん】
> しっかりとカロリーつけて低気圧を乗り切っていただきたいと、応援しています。
いえいえ、カロリー摂取を控え、脂肪を燃焼させる良い機会なのですが、
なかなか誘惑が多い北の大地に悪戦苦闘しています(嘘)。
> 流氷はどこら辺で作られるんだろう、
オホーツク海の北部、アムール川河口に近い海域です。
時々アムール川の氷だとかいう人がいますが、
流氷はれっきとした海水が凍ったものです。
> どっちからどっちに向けて流れてるんだろう、
季節風や海流の影響を受けて、
オホーツク海北部から南部にかけて移動してきます。
> なんで流氷は知床半島周辺に溜まるのか、
北海道オホーツク海沿岸の海岸線と、
知床半島の位置関係を見れば一目瞭然でしょう。
> なんでワシと流氷は密接に結びついてるんだ、
ワシ達は流氷を直接的にも間接的にも利用しているので、
これは一言では語れない事実ですね。
風が吹けば桶屋が儲かる的に言ってしまえば、
ワシとスケソウダラ、スケソウダラの回遊と流氷の移動、
それぞれに密接な関係があるからと言うことになりますが、
事はそう簡単でなかったりします。
この辺りを語り出したら1本の記事になってしまいます(笑)。
> Feb20アップの画像から、周辺の雰囲気ががらりと変わりましたね。
そうですかね。先週の取材地は特に変わってないですが。
一応来週からは場所は変わりますけど。
> レストランの利用客は、オオワシ、オジロ、ワタリガラスだけなのでしょうか。
私が観察している間で言えば、
あとはシロカモメなどカモメ類でしょうか。
> 荒らしや散乱の気配が感じられませんね。
季節が季節ですから仕方ないでしょう。
氷点下10度以下になる場所ですから、
ハエも付かないですよ(笑)。
> キタキツネ、野犬(放し飼いの犬)などは?
この季節、体長1m・翼開長2.4mの大型のワシが、
100羽近く集まっている場所にノコノコ出てこれる動物がいるとしたら、
逆に私は見てみたいですよ。まあクマでもいれば話は違いますが..
ただ、恐らくキツネはワシ達がいない夜間にやってきているはずです。
> モツやおめめを前菜に、そしてメインにお肉、骨と皮はキレイに残して、
食べる順序はそれで正しいですが、
メインは肉よりも内臓のほうでしょう。
> なぜかお顔だけが見事なまでに骨だけになってますね。
オオワシが翼を開いて力を入れると、
砂利の上に乗っていることもあって死体が右に左に動きます。
皮を剥ごうと力を込めて引っ張ったところ、
仰るとおり剥がれてしまったというところでしょうね。
投稿: BigDipper | 2008年2月24日 (日) 15:24
お?本日の撮影、お疲れ様でした。
丁寧な回答、ありがとうございました。
投稿: joshi | 2008年2月24日 (日) 17:51