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2009年1月22日 (木)

ビデオカメラとしての5D MarkII

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EOS5D MarkII(以後5DMk2)を使い始めて約2ヶ月が経ちました。当初は動作が怪しくなり始めた旧5Dの後釜として考えていましたが、想像以上に美しく且つ高精細な画像を出力してくれるので、後釜案は一時保留とし、ライブラリ画像の撮影用としてしばらく活躍してもらうことに。ま、それも旧5Dが動かなくなるまでの話ですけど..

デジタル一眼レフとしての評価は、数多の雑誌や書籍、ネットの書評にあふれており、一介の田舎カメラマンが能書き垂れても詮なきことなので、ここではビデオカメラとしてのインプレを書いてみたいと思います。

【操作編】

動画の記録はライブビューの機能を使って行われるので、光学ファインダーは使えません。必然的に背面の液晶モニターで映像を見ることになりますが、これが思いの外使えるのには感心します。液晶モニターが3.0型の約92万ドットという高精細になったのと、新設の反射防止コーティングのおかげで、晴天下の屋外でもそこそこ見ることができ、何より任意の位置を10倍まで拡大できるので、MFでのピント合わせが非常にやりやすいです。一応コントラストAFが動作してそれなりにピンがきますが、拡大フォーカスとMFの組み合わせがベターです。

発売前から言われているとおり、露出制御はフルオートが基本です。なので絞り優先(以後Av優先)にしてもシャッター優先(以後Tv優先)にしても、撮影開始と同時にカメラが考える最適?な露出に切り替わってしまいます。どんなに絞りを開けてボケの大きな映像を撮りたくても、光量がたっぷりあるようなシーンでは、勝手に絞り込まれてしまい、意図したとおりにはならない可能性があります。それにビデオ撮影の原理からすれば、基本的にシャッター速度は1/60(30pならば1/30)~1/100に固定したいところなので、あまり高速シャッターに設定されても、パラパラ漫画のようになってしまって都合が良くありません。

そこで絞りを希望の値にセット..任意の露出コントロールは露出補正で行う..した後、撮影直前にAEロックを掛けて露出を固定(※1)して使うことになります。私はその辺りの一連の設定を、カメラユーザー設定としてモードダイヤルに登録し、スチル撮影とビデオ撮影の切り替えをスムーズに行えるようにしています。

※1 Av優先でAEロックをかけても、設定した絞り値は維持されません。その名の通りあくまで「露出」が固定されるだけです。ライブビューの設定で露出シミュレーションを選択すると、マニュアルっぽい操作ができそうな情報をちらほら耳にしますが、少なくても現状のファーム(Ver.1.0.7)では不可です。<2009年2月4日追記>

高感度領域では圧倒的な性能を誇る5DMk2ですが、こと日中のビデオ撮影に限って言えばそれを活かす場面などまずあり得ません。晴天下の日中(EV15が標準)で、シャッター速度を1/30~1/60に固定しようとすると、必然的にレンズは絞り込まれてしまいます。例えばISO100で1/30ならば、絞りはF32まで絞り込まれてしまうわけです。もし絞りを開けて撮影したいのであれば、NDフィルターを組み合わせて使う必要があり、例えばND8(1/8)ならF11、ND8+ND4(1/32)ならF5.6まで開けることができます。ただそうは言っても、スチル撮影と交互に行う場面では不便きわまりないので、業務用ビデオカメラのようにボディにND機構を組み込む..HDビデオ専用のEFマウントレンズでも可?..か、装脱着が簡便化できる専用のNDフィルター等をオプションで用意してほしいところです。

ちなみに5DMk2のシャッター速度..電子シャッターの話ね..は、EV15までなら1/30に固定され、それ以上になると最高1/8000まで上がります。先にAEロックで露出を固定できると書きましたが、Tv優先時に1/30に設定したからと言って、電子シャッターが1/30に固定されるという仕様ではないので念のため。

EFレンズには手振れ補正レンズが用意されていますが、その補正自体が動画撮影向きではないので、手持ちでの撮影には不向きです。カメラのコンセプトから言ってもファミリービデオのようなアクティブな撮影用途ではないので、やはり三脚にしっかり据えて撮るべきでしょう。

撮影手順としては、まずライブビューモード..独立したボタンが配置された..に切り換えて、ピント合わせ、露出調整、そしてAEロックを行った後、サブ電子ダイヤル中央のSETボタンで撮影開始となります。ここで問題なのは、タイムコードの概念がないためか、撮影時間がどこにも表示されないので、別途時計で確認するか、頭の中でカウントしなければなりません。ライブラリ用の映像クリップを30秒前後で押さえるだけならそんなでもないですが、ある程度の長さを撮影する場合はやはり面倒です。

撮影終了は再度SETボタンを押すことになります。5DMk2には、業務用クラスのビデオカメラでは一般的なLANC端子が装備されていないため、リモコン撮影ができません。三脚に載せておいても、撮影の開始終了時にはボディに直接触れなければならないので、映像の出だしと終わりは捨てて考える必要があります。

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アツデンのSGM-10を装備したところ。まさかスチルカメラにガンマイクを装備する時代がくるとは..

ビデオ撮影では音声が収録できることが必須です。5DMk2は一応モノラルマイクを装備していますが、カメラから発せられる各種作動音や、ボディやレンズを操作する音をすべて拾ってしまうので、実質的に使い物になりません。が、そこはさすがにビデオカメラメーカー、ステレオミニジャックの外部マイク端子を装備しているので、ステレオマイクやガンマイクなどを別途接続することができ、先の問題を解決しています。

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利便性を考えるとレンズは必然的にズームとなります。なかでも10倍ズームのEF28-300/3.5-5.6L IS(以後EF28-300IS)はベストな選択。ただ、EF28-300ISは直進式ズームなので、三脚に載せた際、焦点距離を変化させると重心も移動するので、カウンターバランスの調整がいちいち面倒ではあります。余談ですが、三脚座がオリジナルのままだと結構なリアヘビーとなるので、逆付けして使うのが良いでしょう。上に載っているマイクは、家に転がっていたソニーのECM-MSD1。ファミリービデオ用の安いマイクですが、内蔵マイクよりははるかにマシです。

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上の写真はライカのアポ・マクロ・エルマリート(以後AME)のR100/2.8を、マウントアダプターを介して撮影(動画からの切り出し)。この場合、絞りはレンズ側の絞り値に依存..いわゆる絞込測光になる..するので、結果的に意図した絞りと露出を得ることが可能です。前述したようなボケを活かした撮影をするのであれば、純正レンズよりもマウントアダプター経由での撮影の方が便利で確実といえます。

【画質編】

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動画素材として見た場合、適度なノイズリダクションと強力な高感度性能が活きて、確かに暗部ノイズは少ないです。が、絵作りに関してはかなり硬質な印象を受けます。コントラストが高く、暗部がつぶれ気味になるので、フィルムライクといえばそう言うことなのでしょうが、XL H1などから比べるとかなり異質な感じがしますね。少なくても同じようなシーンで、絵の連続性が要求される場合など、両者の映像を並べては使えそうにありません。例えば昼間のシーンはXL H1などで撮り、夜間のシーンでは5DMk2を使うなど、目的をはっきりと決め、用途を絞った使い方が必要だと思います。

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風景など遠景の解像感はまずまずだと思います。森など空間周波数の高いシーンで、それが風でも吹いて揺れていると、さすがに破綻気味..かなり端折って再現されている感じ..になりやすいですが。それは動きの激しい動体も同様です。5DMk2がいかに2000万画素センサーを積んでいようとも、フルHDで実際に必要な画素数はたかだか200万画素程度。つまり2000万画素から200万画素に間引いて映像を作り出しているわけで、その辺りのアルゴリズム..どこを活かしてどこを捨てるか..が、まだこなれてないのだろと想像します。

5DMk2の動画に限った話ではありませんが、動画は写真のような後処理(レタッチ)はなるべくせずに済ませたいものです。そこで撮影時に適用されるPicture Styleの活用となるわけですが、標準で用意されている「スタンダード」と「風景」は、色合いが派手すぎてビデオ向きではありません。逆に「忠実設定」では、シャープネスが0なのでボケボケの絵になってしまいます。そこで忠実設定をベースに、シャープネスを適度に設定し、つぶれがちな暗部が少しでも浮くようにトーンカーブを調整した独自のPicture Styleを、専用のPicture Style Editorで作成し、カメラに登録してあります。同じように風景をベースに、コントラストと色合いを下げたPicture Styleも用意しました(こっちはまだ検証中)。

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Picture Styleを「忠実設定」で撮影。縮小されて判りづらいですが、シャープネス0なので全体的に眠い絵になっています。

【編集編】

コーディックがMPEG4 AVC/H.264でファイル形式もMOVとなるので、Final Cut Proを使うAppleユーザーにはお馴染みでしょうが、WindowsユーザーにはMOVファイルは取っつきにくいかもしれません。EDIUSなどでは予め独自のフォーマットに変換して作業することになるので、その分時間を要しますし、Premiereではネイティブで扱える反面、PCにそれなりのパワーが要求されます。さすがにレートで40Mbpsもある..公式には公表されてないが..と、Core 2 Quadにハードウエアエンコーダーを装備したPCでも、タイムラインをコマ落ちなしでリアルタイムに表示させるのは厳しいです。

【最後に】

実際に使う前から判っていたことですが、5dMk2は、やはり既存のビデオカメラを代替えするものではなく、補完し合う関係の機材と言えます。夜間撮影など、XL H1では到底撮れそうにないシーンや、フィルムライクなシーン演出などでは強力にその力を発揮するでしょう。反面、使いこなしにはそれなりの慣れを要し、編集環境などはまだまだ整備されているとは言い難く、一般ユーザーが気軽に持ち出して撮影するのは厳しいように思います。明確な意図とそれを実現する技術を持った人だけに許された、ある意味贅沢で特殊な機材だとも言えます。

キヤノンの次の一手として、個人的には次期1D系..言わずもがな1D markIVですな..に同様な動画撮影機能を搭載して欲しいですね。もちろん、もっと練って洗練された状態でお願いしたいところです。

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17mmの超広角レンズ(EF17-40/4L)での撮影。ワイドコンバージョンレンズを持ってしても、一般的なビデオカメラでは撮影すら難しい領域。静止画自体も、動画の一コマを切り出したものとは思えないクオリティ。母体がレンズ交換式の一眼レフカメラであるということが、5DMk2の最大の特徴であり強みでもあります。

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コメント

いつにも増しての詳細なレポートに、ただただ頭が下がります・・・。

 ひじょうに興味はあるのですが、レンズの資産も無く、40Dも使いこなせていない私にはまだまだ敷居が高いです。高画素のデータ処理エンジンがもっと進化し、今でも安いメモリーがさらに高速化と容量アップ、そして編集環境が整ってからでないと使いこなせないですね。
 午前中、赤城山麓の公園に行ったところ、大砲持っている人が20人以上はいました。ほとんどはプロとは思えず、不景気とはいえ潤っている方もいらっしゃいますね。駐車場では最新のGTRも見かけました。ちなみに私は不景気の風に吹かれまくりです。

一眼デジカメのビデオカメラ機能は、
まだ始まったばかりですからね。
編集環境含めまだまだこれからです。
その筋のパイオニアとなるか、
スタンダードになってから使いこなすか。
ま、考え方次第ですね。

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