山のお伴に三種の神器
先日の記事に列挙した装備のうち、カンターアソルトとハチノックについて反響?があったので、以前にWeb本館で書いた記事(2005/6/19記)を再掲します。4年前の内容ですが現在でもその事情は変わっておらず、さらに近年新たな難敵も現れているので、その辺りの追記もしておきます。
人間は脆弱な生き物である。恐らく裸一貫では全ての生き物の中でもっとも生命力が弱いのでは無かろうか(そこまで言うなって)。そしてとりわけ私は軟弱である(威張るなって)。しかしウィルダネスに分け入りワイルドライフを追いかける身としては、最低限自分の身は自分で守らなければならい。今回紹介する3缶(写真)はそんな私の山のお供であり、何れも不測の事態から私の身を守ってくれる?化学兵器..いや三種の神器とも言える心強い味方なのだ。
【クマ対策】
私が主フィールドとしている北毛エリアは関東でも有数のクマの棲息地である。そこでまずは中央の黒いスプレーの登場であるが、これは「カウンターアソルト(米国製)」という知る人ぞ知るクマ除けスプレーである。通称「トウガラシスプレー」と呼ばれ、唐辛子と同じ成分のカプサイシンを濃縮したガスを噴射し、クマの攻撃意欲を減退させる効果がある(いわゆる催涙ガス)。ちなみに女性が護身用に持っている痴漢撃退スプレーも同じ成分のものが多く、それを3倍濃くしたものがサルや野犬用、さらに10倍濃くしたものがカウンターアソルトなので、その強烈な効果も想像できよう。
現在は国内でもアウトドアショップ等で購入できるが、私のは以前にアラスカから持ち帰ったものである(9.11以降は恐らく不可)。アラスカ滞在中に使用した経験はないが、数年前の秋に某猛禽類の狩場調査でとある伐採地に踏み込んだ際、バッタリ出くわした親子グマ(ツキノワグマ)に威嚇の為に噴射したことがある。その際クマは一目散に逃げていったが、ガスは直撃していないので、親子は噴射音に驚いたのか人間を見て驚いたのかは定かではない。それと後になってから知ったことではあるが、どうやら成分には賞味?期限があるらしい。3年程度とのことなので、果たして手元の缶に効果が残っているのかどうか一抹の不安を感じる。ウゥ~ム..
【ハチ対策】
右の赤い小型スプレーは蜂除けで、その名も「ハチノック」。実は私が山で最も恐れるのはクマではなく、蜂なのである。蜂の毒は神経毒(特にスズメバチのそれは毒性が強い)なので、数回にわたって刺されるとショック死の可能性があるので要注意だ。通常蜂の巣に近づくなどまずあり得ないのだが、藪漕ぎ中にうっかり..というのは十分考えられる事態なのだ。そして奴らが怒った場合、とにかく話して聞き分けるとは到底思えず、ましてや威嚇など以ての外なのだ(いや、クマやダニもそうだって(笑))。ハチノックはそんな攻撃色に染まって怒り狂う蜂達を沈める効果があるのだとか。今頃のシーズンはまだそうでもないが、秋口から冬にかけての山通いには必携のスプレーである。但し、注意書きの対象種はアシナガバチとだけ書かれているのがちと気になるのだが..
【ダニ対策】
最後に左の大きいスプレーだが、一目瞭然ご家庭用「ダニアース」である(笑)。目的が踏査等の山歩きであれば必要ないものだが、春先から夏場にかけての撮影や定点観察でブラインドにこもる場合は無くてはならないものである。北毛の山々はカモシカやシカが多いせいか、大小問わずとにかくダニが多いのだ。撮影や観察の合間にフッと足元を見ると、数匹が長靴からズボンにかけて取り付いているのである。そうなるともう観察どころではなくなるので、ブラインドを張る前に事前に周囲にひと吹きしておくのだ。そうすればその日は1日落ち着いて観察に集中できるのである。一家に1本..いや、ブラインド一張りに1本「ダニアース」である(笑)。
とまあ何れの神器(特に上の2つ)についてもその効果のほどについては十分承知の上で携行しているつもりだが、とにかく過信は禁物である。何せ相手はワイルドライフ、何事にも絶対は無いからだ。
(以上 2005/6/19 Web本館より)
【ヒル対策】
さらにこの三種の神器に加えて、近年緊急を要する問題としてヤマビル対策が挙げられる。最初に言ってしまうが、私はこのヒルの類が大の苦手。クマかヒルかと問われたら、間違いなくクマをとる(どんな究極の選択だよ)。少年時代を過ごした高崎界隈にはヤマビルは生息していなかったが、当時近所の田んぼにはチスイビルが多く、子供の頃は平気でいろいろ悪さ?をして遊んだものだ。それから十数年が経過、マダガスカル北部に広がる熱帯降雨林で赤十字ヤマビル軍団の洗礼..下から横から果ては頭の上から落ちてくる(恐)..を受け、無料献血出血大サービスをして以降、もうすっかり戦意喪失、心の矢を折られてしまっているのだ。
以前は県内のヤマビル生息地は割と限定的だったのだが、近年シカが増えるに連れて、奴らに寄生するヤマビルもその生息域を広げつつある。数年前まで何の憂いもなく進入できた林道や沢筋で、突如として赤十字ヤマビル軍団の献血強制勧誘に出会う機会が増えているのだ。
ヤマビルには木酢液が効くとかよく耳にするが、私が現在お世話になっているのは写真のヤマビルファイター。昆虫忌避剤であるディートの威力でヤマビルを寄せ付けない。ヤマビルファイター導入後は献血の勧誘に遭うこともなくなったので、今のところ効果はあるように思うが、まあ油断大敵。彼の地では上からも飛び込み勧誘を受けたので、今後の日本においても、いつそのようなことが日常化するとも限らないのだ。
ちなみに私の友人に、ヒルは血を吸われても痒くならないが、蚊は痒みの置き土産を残していくので、蚊の方が許せないといっているヤツがいる。確かにそういう考え方もあるのだろうが、ヒルに血を吸われると出血が止まらないのが厄介だし、何よりあの妙なフォルムと不気味な動きは軟弱者の私には受け入れがたい。
とにかく、温暖化だとか何だとかの影響で、日本の山に赤十字ヤマビル軍団の献血強制勧誘の輪が広がらないことを切に願う..


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