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2012年2月 6日 (月)

勿体ない

ある程度予想していた通りの展開だったので、期待はずれと言ったところまでの感想はありません。個々の映像自体はその道のプロが撮ったものといった感じで、一部を除いて..どのパートとは言いませんが(苦笑)..さすが蛇の道は蛇(失敬!)と言えるものでした。同種の映画に昨年公開されたライフがありますが、ライフが最新の機材と撮影技術の粋を集めたものだとすれば、この映画はさしずめ日本のカメラマンの職人芸のたまもの的な風情ですね。

20120206
映画「日本列島 いきものたちの物語」

しかし、残念ながらその構成には疑問符を付けざるを得ません。日本列島何某と銘打っておいて、登場するのはどこかで見た生きものばかり。そう、ほ乳類、鳥、魚、昆虫とその道の映像の達人たちを集めておいて、日本の自然紹介番組でお馴染みの生きものばかりに終始。ドキュメンタリーと言えど、映画に物語の要素を入れ込みたいのは判りますが、親子にこだわるあまり、ストーリーを組み立てやすい生きもの..映像化しやすい撮り慣れた生きものと言い換えても良い..に偏りすぎのように感じました。

奇跡の島・日本列島に満ちあふれる..と言っておきつつ、日本にはヒグマとシカとイノシシ、それにサルしかいないのかい!と思わず突っ込み入れたくなるような構成なんですね。何しろ南西諸島の海を映しておいて、沖縄のジュゴンでも出てくるのかと思いきや、そこでも出てきたのはシカでしたからね(苦笑)。それにナレで絶滅危惧種について言及しつつ奇跡の島を強調していましたが、メインとなって登場した生きもので、喫緊の絶滅危惧種っていましたかねぇ..

私が監督なら、というあり得ない設定ではありますが、どうせなら北海道から沖縄まで、まさに日本列島を季節を追って縦断するような構成..を目指していた雰囲気はありますが、どうにも北海道に青森、それに屋久島と六甲しか印象がない(苦笑)..して、親子の絆をストーリーとして展開するのは青森のサルだけに絞ったほうがシンプルでより訴求力があるように思います。それでいてあとはできる限りの生きものをひたすら登場させるようにしたいですね。新たに撮り下ろすのも良いですが、せっかく皆その道の達人ばかり揃えているのですから、各自手持ちの映像を片っ端からつないでいってこそ、それこそが「奇跡の島・日本列島」であるように思います。

自然科学を扱ったコンテンツがビジネスとして計算できる欧米と違って、日本ではマーケットが年々細くなっていく現実がある中、あえて映画にチャレンジした..逆に言えば映画ならではこそ、か..功績は認めたいところですが、何かこうつくづく勿体ないなぁと感じてしまいますね。


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コメント

日本の自然の幅や奥行きは凄まじいものがありますからね。

狭い島国と侮ることなかれ、そこには内陸、山岳、沿岸、近海にありとあらゆる地形や地帯が存在し、火山もある。さらには4000m近い独立峰があるかと思えば水深2500mに達する湾もある。その中に熱帯から寒帯まであり、さらには四季がある。そしてそこに関わり、生息する生物の豊富さ多様さは推して知るべし。

自然の濃縮ジュースみたいなもので、これは満足いくレベルで表現するには相当なテーマです。

また、表現される側、つまりは鑑賞者側にも問題があります。

国内ひとつとっても、自然観には世代や個人や地域でとても大きな開きがあります。それはもう劇的なくらい。例えば極端な話、土にほとんど触れたことがない。土はばっちいものとして教えられる。昆虫や鳥獣を捕まえたことがない。それらは危険で気持ち悪いものとして教えられる。野山に行っても決められたトレイルばかりを歩き、たとえ少しでも道無き場所に分け入ったこともない。そんなことはルールに反した危険迷惑行為として教えられる。

それは成り行きですからここで正否を論じるつもりはありませんが、しかし私が思うに、そのようにして育った人々をターゲットにして自然を説き、素材を組み立てるのは絶望的とさえ言えるのではないでしょうか。

自然はカワイイ、キレイ、オモシロイ。 ここら辺に訴えかけるしかないのではないかと思いますし、そうなれば歪な自然しか見せられなくなります。

自然を感じ、映像で語るにおいて生殺与奪や輪廻転生は避けて通れぬものだと思いますし、その結果の喜怒哀楽や葛藤、混乱、業は当然、鑑賞者の中に起こるべきものです。

しかしそれを避けなければならない風潮があるわけで。

これほど濃縮され、世界的にもユニークな自然の中にこれほど自然観の鈍磨した人々が住んでいる。自然と闘い、壊すことはできても活かすことはできない。征服し、管理することしか考えられず、あるがままで残しておけない。

かねがね不幸なことだと思っています。

またまた記事本文より濃いコメントを(笑)。

批判的な記事を書いてからフォローするのもアレなんですが、
限られた少ない予算枠なのは十分想像尽きますし、
商業ベースの映画制作には当然メジャースポンサーが付いたりと、
大多数の日本人が好む予定調和にならざるを得ないのかな、
と思っています。

それと記事では触れませんでしたが、
事前のプロモーションなど宣伝のやり方もミスマッチですね。
恐らくシナリオを書いて撮ったのではなく、
大ざっぱな狙いだけで各カメラマンに勝手に撮らせたものを、
編集でつないだのではないかと。
(自ずとテープの尺が長い生きものがメインとなる)

つまり、事前に予定していた狙い所に、
撮影結果が伴わなかったのではないかという疑い。

プロモーションがミスマッチだったのは昨年のライフも同じだったりしますが..

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