春遅いみちのく
奥山の山間をとうとうと流れ下る大量の雪解け水。林道は依然として残雪に埋もれたまま。カタクリやイチゲが花ひらくも、マンサクやキブシが未だに花を残すほどの春の遅さを、皐月とは思えない冷たい雨で寒さを実感。
奥山の山間をとうとうと流れ下る大量の雪解け水。林道は依然として残雪に埋もれたまま。カタクリやイチゲが花ひらくも、マンサクやキブシが未だに花を残すほどの春の遅さを、皐月とは思えない冷たい雨で寒さを実感。
現在、花見と最も馴染み深いソメイヨシノは、江戸末期から明治初期にかけて広く普及したものであり、いわゆる園芸品種であるためか、自然愛好家にはソメイヨシノのような里桜よりも、山中にひっそり咲く一本桜のヤマザクラが好きだという人が多いようです。ヤマザクラの淡いピンクは、モスグリーンを基調とした芽吹き前後の森では一際目立ち、そこにあるだけで山の春が華やぐのは間違いなく、たった一本であっても主役の座を決して明け渡すことはありません。
そういった個人的な嗜好はさておき、日本人は昔から桜を愛でる習慣がありますが、歴史的には平安の世まで遡る..それ以前はもっぱら梅を鑑賞していた..ことになるようです。当時は野生種を庭園などに移植して鑑賞していたようですから、主にはヤマザクラだったと考えられます。食わうや食わずで苦労していた庶民に花見をする余裕などはなく、もっぱら貴族たちの遊びの一つでしたが、中でも戦国後期の桃山時代に、時の天下人であった豊臣秀吉によって奈良の吉野山で催された花見は史実として有名ですね。
桜は咲いた後に一気に散る花だったためか、徳川の治世になって魔もない頃は武士階級に忌み嫌われたようですが、江戸中期以降は政策的なものもあって花見が庶民文化として広く根付いたため、この頃に現在の日本人の桜に対する特別な感情が芽生えたと考えられます。花見に代表されるように、桜は概ねプラスの面が強調される傾向にありますが、歴史的には帝国主義に端を発して先の大戦まで、軍事思想教育で桜の如く潔く散ることを美徳とされた史実も、負の面として忘れることは出来ません。
生きものが営みを始める季節、その春に沢山の花を付ける桜。日本人は弥生の頃より稲作文化を育んできた農耕民族であるため、雪解け水あふれる春に花を咲かせる桜は、苗代桜としての役目もあったようです。そして日本の慣例では春は時節の変わり目。その時期に盛大に花を咲かせ、同期の桜..語源は軍歌だけど..などと表現し、終わりと次の始まりを象徴する記念の花でもあります。つまり日本人にとって桜は愛でるだけでなく、人それぞれに特別な意味を持つ、または持たされる国民的な花木であると言えます。
残雪と新緑のコントラストが美しいのはこの季節ならでは。ただ、朝はあまりの寒さにダウンを羽織り、午後には今度は暑さにめげてTシャツ一枚にと、気候もやたらとメリハリのある一日でした。
急遽、奥信濃に滞在中。桜前線は東北を通り越して北海道へ上陸していますが、本州でも標高の高いところや気温が低いところでは、まだまだこれからって感じですね。この冬は降雪量の多さに焦点が当たっていましたが、気温が低かったことも特筆すべきことだったと思います。
連休ということもあってか、荒天なのにこんな山奥でも結構な人出でしたが、皆のお目当ては山菜。下界に比べて一足遅れの春なので、フキノトウを始めほとんどがこれからがシーズンといった感じでした。ただ、地元の人は割と素知らぬ顔で、フキノトウなど庭先のものは大半がとうが立っていました。
しばらく留守している間に、ようやく我が家の桜も咲きました。数年前、近所からもらったソメイヨシノの苗木を植えて、その後まったく花を付ける気配がなかったのですが、どういう風の吹き回しか今年はじめて咲きました。ま、葉桜という通常ではない形ですけどね..
今日は山のような庭仕事に従事。まずはこまめフル稼働による畑起しに雑草取り。続いて昨年の大震災で外れて以来機能してなかった雨樋の修繕、冬季の凍結で地面が起伏し、これまた機能してなかった雨水枡の埋戻し作業。そして止めは巣箱の設置。
巣箱自体は下の倅が昨年林業関係か何かのイベントで貰ってきた代物で、単端材を使って作ってあります。大きさはそれなりに適当で、先日のようにしこたま巣材を詰め込むこともなく(笑)、出入口もマニュアル通り約2.5cmなので、カラ類など小鳥が使用するには良い出来だと思います。ただ難点は、どこも開けられないので、後で掃除ができないこと。シーズンが終わって留守宅になった際、次のシーズンに備えて掃除などの手入れは必要なので、屋根蓋の片側を蝶番で開閉できるように改造しておきました。
家人は冬季にヒマワリの種で誘致しているシジュウカラに、是非とも使って欲しいようなことを宣っていますが、まあ十中八九はスズメの新居になるのがオチでしょうな(笑)。
桜前線は本州を北上し、青森辺りまで到達したようですが、急峻な山稜より冷涼な風が吹き下ろす雪国の寒村では、今まさに桜満開。
ハシボソガラスは里山のカラス。古より人里近くの林に居を構え、人の生活圏に遠からず近からずの距離感を好みます。近年、都会で生活するハシブトガラスが、ハンガーなど使って巣を造る例が増えているように、農村部での造巣にも農業資材などの新建材..写真の巣にはビニール紐が数カ所で使われている..が用いられています。野生ゆえ、決して人に媚びるような生き方はしない彼らではありますが、使えるものは何でも利用するしたたかさも、それなりに持ち合わせているということの証明です。
天狗様の古巣を双眼スコープの視野中央で捉えると、何と予期せぬ白いものが動いているではないですか。ここのペアは今年は途中で放棄したとばかり思っていたので、思わずヤッター!と叫んでしまい、慌ててビデオのRECをレリーズ。距離にして2kmほど離れているので、陽炎の影響でボヤボヤですが、モニターに映し出される白い物体はまさにお雛様のそれ。もう気分はルンルンで一人ニコニコしていたところ、その影にもう一つうごめく白い物体がいるではないですか。おー!これはもしかして2羽ふ化したのか!だとすれば国内の野生下では自身初。
間違いないかと震える手でデジタルズームで拡大、凝視すること3分。確かに複数のお雛様。それも3羽。アレ?3羽?それはいくらなんでもねぇ。おや?そう言えばよく見ればお雛様たちは巣材の上ではなくその隣りの露岩した岩の上にいるような。と、ここでモニターのフレーム内に飛び込んできたのはハヤブサの雌。えーーーー!そ、そういうオチで良いのか、これ..
ハクビシンはご近所界隈では目下の最重要指名手配犯..今が旬のイチゴ農家の被害は相当なもの..であるため、捕殺駆除されても同情する余地はありませんが、この手の交通事故死は痛ましくもありますなぁ。このご立派な道路はつい最近開通したばかりで、まだ動物たちに認知されていないので、当分はこの手の事故は止みそうにないです。写真には写っていませんが、左手のアカマツ林にはカラスとトビが待機しています。ちなみに私が轢いたわけではないので念のため..
沼田公園の桜はようやく咲き始め。とっくに桜まつりは終わってしまったので、何ともバツの悪い話です(苦笑)。
ところで、午後は桜絡みで突然の撮影依頼。昼飯頬張りながらのんびり天狗様を観察中でしたが、良い企画がまとまった..思いつきとも言う..とかで携帯呼び出し。急な話で他に頼める相手もいないので、観察中断で沼田へ慌てて取って返し。しかし、あいにく手持ちの車載機材は先日のままで、EOS-1D4とEF100-400ISのみ。さすがに130mmじゃあバストアップがせいぜいなので、ジムニー号のガラクタ箱こんなこともあろうかとでお馴染みの真田箱..このフレーズが分かる人は同世代だ!..から、トラップカメラ用パーツの残骸備品よりEF28-90(古っ!)と550EXをサルベージ、コンビニで単三電池ゲットして無事ミッション完了。逆境を乗り越え、依頼された仕事を完遂することこそ真のプロフェッショナルの姿というもの。え、備えが悪いだけだって?ええ、まったくその通りです、ハイ..
春、他の花に先駆けて花を咲かせ、優先的に虫媒花となるスミレ。新たに崩れて露出したような荒地の斜面にも、やはり他の種に先駆けて根付きます。こういった場所は再び斜面が崩れたり、大雨で表土が流れたりする可能性が高いので、決して好条件とは言いがたいですが、小さい花には小さい花なりの生き抜くための戦略があるという一つの例ですね。
山中にひっそりと咲くヤマザクラも良いですね、などと書くと舌の根も乾いてねぇとか言われますか(笑)。
英名でJungle Crowはいわゆるハシブトガラス。名前の通り本来は森林性のカラスですが、国内では都市部に多く住み着いていることが知られています。カラスの仲間は知能が高く、多種に比べても順応性があるので、都市(コンクリートジャングル)を森林に見立てて、水平から垂直まで空間を上手に利用しています。営巣場所も本来なら樹木に巣を架けたりしますが、都市部では人工的な構造物も利用しており、さらに近年は都市だけにとどまらず、たとえ人工物の少ない山間地であっても、写真のような高圧線の鉄塔に巣を掛ける例が増えています。利あって害なければあらゆる物を利用できるというのは、やはり進化の賜物なのでしょうか。
北に南に彷徨いているためか、なかなか良いタイミングで満開のソメイヨシノに出会えませんでしたが、ここに来て何とか追いついたようです。先日の春の嵐で散ってしまったかと心配しましたが、まだ道中何ヶ所かは愛でることが出来ました。ソメイヨシノは造花なので嫌いだとか宣う人もいますが、やっぱりニッポンの春は満開のソメイヨシノで決まりでしょう。
ピィーヨ、ピィーヨと鳴きながら、愛のディスプレイをするノンちゃんカップル。ツミに追い回され、オオタカにはド突かれ、それでも愛を育みます。春ですね。
この夏は畑の実りにかなり開きがあって、ナスなどは大物が豊作なのですが、枝豆は未だに花すら咲きません。期待のトウモロコシもまだこれから。トマトはようやく良い感じになってきて、今はブルーベリーが例年より半月遅れで豊作収穫中といったところです。梅雨入り梅雨明けが早かったせいで、世の中的には季節の歩みは早いような雰囲気が漂っていますが、生り物的には逆に遅い感じですね。と、遅いとは言いつつも、もらい物が多いので夏野菜は売るほど余っていますけどね。
そしてこれが今夏第一号のヒマワリ。やっぱ遅いですなぁ..
天狗谷を見渡す尾根へと続く、日当たりの良い南向きの急傾斜地に自生するのはカワラナデシコ。本種は秋の七草の一つに数えられ、利根ではお盆前にはその可憐な花を咲かせます。多年草なので毎年同じ場所で目にしており、いつもなら何気にそのまま通り過ぎて行く..と言うか機材背負って大汗かいている状況なので、正確には目を止める余裕がないだけ(苦笑)..ところ。が、つい先月その名を冠したナデシコジャパンの偉業を見せられていますから、さすがに今夏は思わず両手を合わせて拝んでしまいますね。
大和撫子と書くと、可憐さの中にもしっかりとした芯の強さを抱く日本婦女子を指しますが、このカワラナデシコの俗称でもあります。園芸種にも近縁種が見られ、公園の花壇などにも植えられたりしていますが、大和撫子のイメージするところでは、やはり自然環境下に自生しているその可憐さこそ、本来の意味なんでしょうね。