昨秋、立山連邦の一つ剱岳の三ノ窓雪渓の一部が、厚さ30mにわたって年に4mほど下方に移動していることが判明。国内で初めて氷河として認められ、来月に日本雪氷学会にて論文発表されます。

懐かしい若き日の変なのが写り込んでいますが(苦笑)、写真は記事の舞台である立山連峰の一角です。
■神の山、神の鳥
雪や氷など万年雪が溶けることなく圧縮され、複数年にわたってほぼ恒久的にその状態を維持し、尚且つ重力による自然移動など流動的な状態のいわゆる氷の塊を指す、というのが氷河の定義になるようです。
氷河期だった1万2000年前頃には国内にも氷河は存在しており、その名残が日本アルプスや北海道の大雪山系にカール地形として名残を刻んでいますが、間氷期で温帯に区分される現在の日本に氷河はないとされる意見が大勢でした。それでも戦前、立山周辺に氷河が存在するいう説を唱えた学者が京大にいたそうです。ただ、現地は専門的な登山家でも近づくのは難しい..明治期、剱岳を含む立山一帯は、一等三角点の設置に最後まで苦しんだ山塊で有名..上に、そもそも堆積した氷の層が流動していることを測る装置が無かったため、今日まで真偽の程が棚上げされてきた経緯があるようです。
ヘリなど航空機が発達している現代なら、空から見てすぐ判りそうなものですが、前述のとおり氷河は流れていることが条件の一つなので、夏でも溶けない雪渓があったとしてもそれは万年雪でしかありません。それが近年、携帯性に優れたアイスレーダー(氷の厚さを測る装置)やGPS装置(移動していることを測定する)などが開発されたため、今回の発見..先達の苦労をしのべば「認定」が正しいのかな..となりました。
先に日本は温帯に区分とは書きましたが、積雪の基本となる降水量は偏西風の影響もあって非常に多く、3000m級の山塊を擁する本州中央高地の積雪量は世界有数です。よく北海道は雪が多いと思われがちですが、単純な年間累計では本州のほうがより多雪です。以外に知られていませんが、滋賀県と岐阜県の県境に位置する伊吹山山頂で戦前に観測された11.83mが、90年経った今でもギネス記録として残っています。

日本と同じように年間降水量の多い南東アラスカは、極地に近い緯度の関係で数多くの氷河が見られる。4000m級の頂にある氷河も、いずれは海に帰る時が来る。

氷河はその自身の膨大な重さで少しずつ高きから低きへ移動する。それが氷の河、つまり「氷河」の名を表わしている。

氷河が海に流れ込むまさにその河口。横縞は永い年月が生んだ積雪の圧雪状態を現しており、縦縞は下流域で谷が狭くなって急激に横方向から圧力が加わったためにできたひび割れである。

突然静寂を破り、轟音とともに氷の壁が崩れ落ちる。気の遠くなる年月を旅してきた氷が、あらゆる水分の源である海へ帰る瞬間。この後、船が大きく揺れることとなる。

氷河に近づくと、Glacier Blueと呼ばれる何とも不可思議な青さが眼を引く。冷蔵庫の製氷室などで作られる氷は、空気が多く混ざっているため気泡が多く、可視光線のほとんどが反射して白っぽく見える。その点、氷河の氷は長い年月をかけてその自身の重さで圧縮されているため、密度が高く空気が含まれておらず、それ故に波長の長い赤は吸収されてしまい、波長の短い青が反射して見える。これは海の色が青いのと似た理由だ。

アラスカの中央高地にあるポリクロームパス。そこから望む眼下に広がる地形は、はるか昔に氷河が削った通り道。氷河期も終わり氷河はアラスカ山脈まで後退しているため、今は氷河を源とする冷たい流れを望むことになる。
日本初確認の氷河。可能であればいつか見に行ってみたいものです。南海の珊瑚礁から流氷浮かぶ北の海、そして氷河戴く高地まで、つくづく日本列島は多種多様な気候と自然環境に囲まれているんだなと感慨深いですね。