カテゴリー「環境問題」の13件の記事

2012年2月26日 (日)

どこで線を引くのか

先日、北海道の阿寒にて、嘴に空き缶が刺さったままのタンチョウがいると話題になっていました。川底とかに落ちていた空き缶が光ったか何かして、思わずつついて刺してしまったと思われます。缶が刺さったままだと、嘴を開くことが出来ないため、遅かれ早かれ餌が採れずに命を落とすことになります。絶滅危惧種救済という大儀で、保護増殖事業の名の下に税金掛けてせっかく増やしたタンチョウですから、環境省が捕獲..そりゃまた金が掛かるわな..して空き缶を外す算段をしているとのことです。

余談ですが、同じような話を挙げれば、釣り糸の絡んだシギチ、矢が刺さったカモ、風力発電のローターにぶった切られるオジロワシ、道路を横断中に車に轢かれるヤンバルクイナ、狩猟の残渣を食べて鉛中毒になったオオワシ、奥山での開発圧でジワジワ追い詰められつつある天狗様等々、やや味噌も糞も一緒に論った感もありますが、何れも人為的な行為が絡んでの話に大差はありません。

前述の空き缶の話に戻して、その後情報がないのでどうなったのかは知りませんが、タンチョウの命を救うのも人であり、目的と結果はどうであれ空き缶を捨てたのも人なわけで、美談なのか、はたまた人の為せる業なのか。一体どこから人手を介して救うべきで、どこまで行ったら放っておけば良いものなのか、何とも釈然としない不可思議な話です。

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ちょっと前にはこんなことも。川を挟んだ対岸の廃業したと覚しきロッジ風の建屋内で、何やら飛び回っているものを発見。拡大して見てみると、シジュウカラが入ったは良いものの、出られなくなってしまったようです。当然、このまま出られなければ、餌が採れずに命を落とす線が濃厚..もちろん入ったので偶然出られる可能性もあり..ですが、この手の話も然るべきところに通報すれば、然るべき人たちが、然るべき金を使って助け出してくれるんでしょうか。あ、シジュウカラは絶滅危惧種でないから、そもそもお上の眼中にないか..


2010年7月 7日 (水)

我が振り直せ

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大雨が降った後の河口付近の海岸線。広い砂浜にポツンと置き去りにされた青いポリ缶が、何となくシュールな感じです。

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でも付近の浜を散策すると、すぐに現実の世界に引き戻されてしまいます。海岸線の漂着ゴミ問題になると、中国や台湾それに韓国などの海中投棄ゴミの話になりますが、写真に写っているゴミはすべて日本製、紛れもないメイドインジャパンです。海外からの観光客が、日本は街中にゴミが落ちてなくてきれいだとほめる話を耳にしますが、地方の田舎に行けばこんな光景はザラです。他国を責める前に、まず自分の国の足下をしっかり見つめ直すべきでしょうね。

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まるでオジロワシのように辺りを睥睨するトビの夫婦。こうして見るとなかなか捨てたもんじゃないですね、と言いたいところですが、この後海岸のゴミ山を漁っていたので、やっぱりスカベンジャーなトンビでした。

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その名の通りの千鳥足で、波打ち際を行ったり来たりしていたのはシロチドリ。

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思わずビーチパラソルを立てたくなるようなシチュエーションの定点。ただ、ビール片手に海パンいっちょで仕事するわけにもいかないので、汗だくになりながらひたすらスコープを覗いていました。本格的な夏はすぐそこまで来ているようですね。

2008年2月29日 (金)

穏やかなり根室海峡

今日は先日の暴風雪が夢か幻かと思えるほど、穏やかでそして暖かい1日でした。連日氷点下だった気温も一息つき、渡道後初めて日中の気温がプラスになりました。お陰で車体周り下部やフェンダー内にビッシリと凍り付いていた雪と氷がすっかり落ちてくれ、洗車場で洗い落とす手間が省けました。

ワシ達の動きも心なしか活発で、氷下待ち網漁で漁師が雑魚を氷上に捨てていくのを、いつもなら漁師がその場を去ってしばらくしてから飛んでくるのに、今日は漁師のスノーモービルが動き出すと同時に行動を開始し、賑やかに争奪戦を繰り広げていました。まあ単に腹が減っていただけかもしれませんが(笑)。

2月も終わりを告げ、明日からは暦の上では春へと向かいます。人のカレンダーなど野生動物には何ら関係はないものですが、根室海峡に流氷が流れ込んで以降、季節も確実に春に向けて動き出しています。3月に入ってオホーツク海沿岸の港から海明け..流氷が岸から離れて漁が開始される..が宣言されるようになると、ワシ達もボチボチ北帰行の算段を始めるようになります。繁殖予定のない若鳥たちの中には、GW頃まで道内に留まる個体も居ますが、成鳥たちは一刻も早く自分たちのテリトリーに帰って、繁殖の準備を始めなければなりません。

道内で繁殖する地元のオジロワシなどはすでに準備に入っており、時折ディスプレイフライトなど越冬組のワシ達の前で見せつけるようにやって見せます。そうするとそれに触発されるのか、ペアリングの済んでいるオオワシのカップルが、唐突にディスプレイを見せてくれることがあります。今日も2組のオオワシ成鳥が、漁師の投げたカジカを拾ったかと思うと、雄が雌に空中で餌を投げ渡す..いわゆる求愛給餌..ところを観察できました。何気に数羽で群れているところを見ていると、夫婦なのか兄弟なのか今ひとつ血縁関係が判りにくいワシ達ですが、この時ばかりは夫婦であることを確認することができます。

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先日の暴風雪の影響で野付の沿岸から流氷は一旦離れましたが、浜辺にはしっかり置きみやげを残していきました。折り重なるように盛り上がった厚い氷や、テーブル上の平らな氷など形は様々ですが、何れもワシ達の見張り台にはうってつけで、少しでも高いところがあると、大抵ワシがパーチして辺りを睥睨しています。そんなワシが急に飛び立とうものなら、氷の間でくつろいでいたホオジロガモやクロガモなどが、大騒ぎで逃げまどう姿を見ることができます。そうそう、ちょっと浜から距離があってフィールドスコープによる確認になりますが、沖合の流氷帯近くに10年振りにコオリガモを見付けました。

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北海道の道は絵に描いたように真っ直ぐです。だからというわけではないでしょうが、河川も真っ直ぐなものが多くみられます。しかし当たり前ですが、自然環境下で真っ直ぐな川などあるわけもなく、言うまでもなく治水名目の河川改修で、直線的に流れるように人為的に工事されたものになります。川は氾濫して蛇行することで、山間部の森林地帯より栄養分の高い土砂を下流域に運びます。それが流域に肥沃な土壌もたらすわけですが、蛇行河川を真っ直ぐにして氾濫することを押さえてしまっては、その自然の摂理を抑制してしまうも同然なのです。

そしてF君が渦中の人となっているのが、標津川の蛇行復元問題。元々は治水事業の一環なのですが、30数年前の河川改修工事で真っ直ぐな流れに改修したものを、その以前のように再び蛇行した河川に戻すというものです。話を聞くだけで何とも無駄なことをするものだと呆れかえるわけですが、問題は30年以上の時を経て、真っ直ぐなら真っ直ぐなりに適応してきた現在の自然を無きものにしてしまうという、その傍若無人な北海道開○局の考え方にあります。

既に現在の自然環境下に、オジロワシやタンチョウがそれぞれ複数の生活圏を築いているのを、自然を回復するというキャッチコピーの蛇行復元工事で、すべてご破算にしようというのだから本末転倒と言わざるを得ません。今日はその辺りの勉強会が標津と中標津で行われ、F君の他、工事に疑問を抱く住民代表らが毅然と意見を述べるのに対し、事業主側では明確な回答が出来なかったようです。F君らの活動は、これからしばらく緊張状態を続けることになりそうです。

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本日の肴は利尻産のホッケ。内地の居酒屋などでホッケを頼むと、これはアジの開きか?と見まがうようなものが出てきますが、北海道のホッケは倍以上に大きく且つ肉厚です。F君と標津川蛇行復元問題について協議..と言っても私はただ聞いていただけですが(笑)..しつつ、今宵は十勝池田のワインと一緒に頂きました。

EOS-1D Mk3(EF500/4L IS)
EOS40D(EF28-300/3.5-5.6L IS)
Caplio R6

2008年1月26日 (土)

アース

50万年前、巨大な隕石が偶然衝突したことで地軸が傾き、その結果地球に季節が巡るようになりました。そんな生命に満ちあふれた奇跡の惑星地球の四季を、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏が流れる中、北極から南極まで順にたどりつつストーリーは進行します。

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主役は地球。そしてホッキョクグマ・アフリカゾウ・ザトウクジラ・アネハヅルなど、各分野の環境保護系フラッグシップ種らが脇を固める重厚なキャスト。制作は英国BBC、スタッフは映画「ディープ・ブルー」のメンバーを中心に、5年の歳月をかけて撮影した映像をもとに作られた映画、それが「アース(earth)」です。小人料金が500円と言うことで、下の倅を連れて見に行ってきました。

実は映像的にはどこかで見たようなシーンが多く、まあそれもそのはずで、ちょっと前にNHKが放送していた「プラネットアース」の超ダイジェスト版といった感じの内容です。では新鮮味がないのかと言えばそんなことはなく、海のクマとも言われるホッキョクグマの遊泳シーンや、航空機から撮ったとは思えない微塵の揺れも感じさせない空撮映像、数mの距離まで接近を許したザトウクジラの親子、闇夜に紛れゾウの親子を狙うライオンの狩り等々、その筋の専門スタッフによる長期取材ならではの珠玉の映像が続きます。

ワイルドライフ撮影を志す者にとっても、姿勢制御装置(通称ヘリジンバル)を装備した航空機による空撮、超ハイスピードカメラを使った動態撮影や時間軸の推移、赤外線撮影装置による夜間撮影など、最新の撮影技術の粋を集めた映像を目の当たりにすることになります。これはもう表現者として羨ましい限りですね。

映画としての全体のストーリー構成については少し?な部分もありましたが、前述の通り何れの映像も素晴らしく、地球の四季の移ろいの美しさや、生きものの営みの逞しさには心打たれるものがあります。しかし、最近この手の映像を見ていても、何かこう今ひとつスッキリ感動できないというか、心の中に葛藤を感じてしまうのもまた事実です。

子供の頃よく見ていたテレビ番組に、野生の王国という番組がありました。毎週紹介される世界各地の野生動物の生態を、子供ながらにワクワクしながら楽しみに見ており、私をワイルドライフの世界に誘ったのも同番組でした。世の中の事情を知らない子供であったことを割り引いたとしても、当時は純粋に楽しめた動物ものの映像も、今や地球の未来を憂い無ければならないほどテーマが深刻になっており、そんな事実が、地球や生きものたちの素晴らしさを純粋に喜べない理由の一つになっているように思います。

自然や生きものに興味のある方だけでなく、一人でも多くの方にアースをご覧になっていただきたいと思います。そして現在の地球の直面する危うさを、不本意ながらもその美しい映像のバックグランドから感じて欲しいと思います。昨年公開され、各方面から物議を呼んだ地球温暖化をテーマにした映画「不都合な真実」よりも、ある意味その深刻さを感じることが出来るはずです。

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旭山動物園にて

映画のオープニングとエンディングに登場する地球温暖化の象徴とも言うべき極地の崩壊、そしてその砕けた氷海を彷徨うように泳ぐホッキョクグマの姿を見ていると、自然と胸に熱い思いがこみ上げてきます。

2007年10月16日 (火)

北極のナヌー

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見に行ってきました。原題は「Arctic Tale」。北方志向者として、究極の北をテーマにした映画を見逃すわけにはいきません。監督・撮影は海洋研究家のアダム・ラヴェッチと、北極のドキュメンタリー作品を数多く手掛けるサラ・ロバートソン、制作はナショナル・ジオグラフィック・フィルムです。
Caplio R6

ストーリーはホッキョクグマの親子と、セイウチの親子の子育てを中心としたもので、彼らがいかに北極の氷の大地..正確には海だが..に依存して暮らしているかという点を、15年近い歳月をかけて撮影したものです。他にもイッカクやセミクジラなど、北極で見られる様々な生きものが登場します。

カメラマン的な視点で見ると、まず寄り、つまりクローズアップ撮影が多いことに気が付きます。北極というかなり特異な環境下で、あれだけワイルドライフに近づけるというのは驚きです。特にホッキョクグマが泳ぎながら近づいてくるところを水面直下のアングルで引きながら撮るシーンなど、考えただけでも恐ろしい(苦笑)。ま、この点についてはエンドロールでタネが明かされていましたが、その他、水中撮影を多用しているところなど、映像の見せ方にも相当こだわっているように思います。

日本ではNHKに代表されるように、自然景観や野生動物の記録にはハイビジョンカメラを多用する傾向があります。もちろん自然科学的にはそのほうがリアルな映像になるわけですが、本作品は長い年月をかけて撮影していることもあって、フィルム..恐らくスーパー16でしょう..による記録です。映画館での上映でしかもネイチャードキュメンタリーとあって、フィルムの深みと味わいのあるノスタルジック..古いという意味ではない..な映像を楽しめました。これは昨年公開の「ホワイト・プラネット」や「WATARIDORI」なども同様ですね。

話は変わって、北極ネタとなると昨今は環境問題とは切っても切れない関係になります。つい先日、米国のアル・ゴア元米副大統領..「不都合な真実」の著者..が、人為的な地球規模の温暖化傾向の事実普及に貢献したとして、ノーベル平和賞を受賞しました。本作品はその地球温暖化の影響を真っ先に受ける北極を舞台にしており、サブタイトルも「30年後に北極がなくなる」というかなり重いテーマを冠しています。

何故、北極の氷が解けるとホッキョクグマに影響があるかという点については、以前に書いた以下の記事をご覧ください。

【ホッキョクグマの危機】
http://bigdipper.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_85ef.html

【ホッキョクグマ、レッドリストに】
http://bigdipper.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_7ca1.html

北極は約170万年前の氷河期に氷に覆われて現在のような姿になったわけですが、それがこの100年間に平均気温が2℃も上昇..地球全域の平均では0.74℃上昇..したことで、加速度的に永久氷床..氷河など夏でも解けずに残る氷のこと..が減少しています。米国立大気研究センター(NCAR)によれば、04年から05年のわずか一年でも永久氷床の14%が減少、このまま温暖化傾向の気候状態が続くようだと、2040年までに北極の永久氷床のすべて無くなってしまうと予測されるそうです。

ちなみに、「北極の氷が解けると海面が数m上昇する」と言った類の話をよく耳にしますが、実際はそこまで大げさには変化はありません。コップに氷を入れて水で満たした後、氷が解けて水が溢れるかと言えば答えはノー。これはいわゆるアルキメデスの原理という法則で、「地上にある氷床が解けて海に流れ込んだ場合」というのが正しい理解になります。

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そろそろ蒟蒻の収穫が近いというのに、近所ではクロフネツツジ..一般的な花期は5月..が咲いています。このように季節外れに花が咲くことなどを気象用語で「不時現象」と言いますが、これは直接は温暖化とは関係がないそうです。とは言え、近年の異常とも言える9月の気温の高さは実感できるわけで、温暖化と無関係と言われてもそう簡単に割り切れるものではないですね。
Caplio R6

2007年7月21日 (土)

エコログのエコは..

エコシステム(Ecosystem)のエコです。時々エコロジー(Ecology)のエコと勘違いしてコンタクトしてくる人がいますが、あくまで生態系を意味するエコシステムのエコです。ゴミ処理の仕方や自然再生に関しての説明書きはないので念のため。

もっともエコロジーも本来の意味は生態学なわけですが、近年は「地球に優しい」ことを体現する行為を総称してエコと呼ぶようになっていますね。私自身も某希少動物の保護活動に取り組んでおり、このブログでも時々は環境問題を取り上げることがありますが、日常生活で特別にエコな生活をしているわけではない..もちろん心掛けてはいますが..ので、ここで声高に「地球に優しい」を意味するエコロジーのエコを唱えるのはおこがましいかなと思っています。

と言いつつ、17年ぶりに冷蔵庫を買い換えました。夏季になると、爆発するのではないかと思うほど(笑)異常にモーター音が響いて、どうにもうるさくて仕方なかったのですが、これでようやく静かにDVD鑑賞ができるようになります。それに何と言っても最新型の省電力・ノンフロン型..今更と言えば今更ですが..なので、多少はエコロジーに配慮したと言えますかね(笑)。

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冷蔵庫の扉に何やらDSPの文字とともに液晶ディスプレイが付いています。DSPとは「Digital Signal Processor」略で、デジタル信号を処理するマイクロコンピュータのことになりますが、とうとう白物家電の代表格である冷蔵庫までもコンピュータ制御になったんですね。
GR DIGITAL F2.4 ISO200

運んできた業者のおっさん曰く、「デジタルなので雷が多い地域だと誤作動する場合がある」だそうです。誤作動って、よもや雷が鳴った途端に冷蔵庫の中身を暖めたりしないだろうなと、家人と顔を見合わせてしまいました(笑)。

2006年11月 9日 (木)

初霜とANWRの行方

朝、玄関を出た途端に寒気が身を包み、吐く息で視界が白くなりました。寒暖計に目をやると0℃。ララァの水飲みバケツにうっすらと氷が張り、庭も霜..例年よりは1ヶ月近く遅い..で一面真っ白けです。先日北海道で猛烈な竜巻被害をもたらした寒冷前線により、日本海に引き続き寒気が入ってきており、その影響で今朝の赤城高原は放射冷却になったようです。

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EOS30D EF50/2.5 COMPACT-MACRO
ISO200 Picture Style「忠実設定」
(データ共通)

昨日のアメリカ中間選挙報道で、久々に民主党の躍進が報じられました。やはりイラク問題が主たる争点のようで、遅まきながらアメリカ国民の民意が動き出したと言えるのでしょう。さて、戦争と言う愚行に嘆くのは当然としても、その影に埋もれてなかなか脚光を浴びない現実として、自然環境保護の問題があります。とりわけ北方志向者として私が特にその成り行きを注視しているのが、アラスカの北極圏野生生物保護区(ANWR)の石油採掘問題です。

ANWRの開発はアメリカのエネルギー戦略と複雑に絡んでいて、前クリントン民主党政権時代にも採掘検討されましたが、写真家星野道夫氏の友人でもあった自然保護運動家のシリア・ハンター女史(故人)らの行動によって、一時的に無期限凍結されていました。それが現ブッシュ共和党政権になってから、イラク問題をすう勢とする中東情勢に絡んで何度と無く上院下院の予算案に開発案として盛り込まれてきたのです。

もしこのまま放っておいてなし崩し的にANWRの開発が進めば、将来に渡ってアラスカ北極圏の生態系に取り返しの付かない事態になってしまいます。人間の生活の豊かさとは切っても切れないつながりのあるエネルギー資源問題ですが、未来の子供達に残さなければならないかけがえのない自然と天秤にかけるのは、現代に生きる我々の傲慢と言っても過言ではないでしょう。

今回の中間選挙で優勢の民主党は、開発優先の共和党..の中にも開発反対派は多い..に比べ、どちらかと言えば保護に重きを置いた政策を持っています。とは言え、国家のエネルギー戦略の名の下、いつ政治的な駆け引きの中で、石油埋蔵というパンドラの箱が開けられてしまうのかという点については予断を許しません。引き続きアメリカ国民の英断に期待したいところです。

2006年10月 5日 (木)

100円に気持ちを込めて

あなたは100円を払いますか?それとも..

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尾瀬でトイレに入ると写真のようなお願いを目にします。掲示の隣には募金箱が取り付けられているので、これが募金の類を要求しているのだと言うことは、一般的な常識を持ち合わせていれば判ると思います。つまりトイレを利用するならば、「環境保全協力金」の名目で寄付をお願いしますと言うことですね。

尾瀬はその周辺を含む一体が国立公園に指定されている..来年中に尾瀬単独で国立公園となる予定..ので、本来は国が十分な予算を出して管理すべきなのでしょうが、そこはお役所の中でも特に非力な環境省の管轄。公園利用施設の管理運営を任されている尾瀬保護財団だけではなかなか思うように資金が回らないようで、そこで入山者からし尿処理に掛かる費用の一部を負担してもらおうという訳です。

管理する資金の賄いという側面だけで言えば、利用者からいくらかの入山料を徴収するという案も出てはいるようですが、そこはそれ、入山者はもとより観光業者や山小屋関係者から「客が減る」と言う理由で反対されているようです。入山者が増えることで見所である自然環境に悪影響が出れば、貴重な自然の豊かさが売りであるはずの観光として本末転倒だと思うのですが、その辺り山小屋関係者まで反対するというのは少々理解に苦しみます。

さて件の環境保全協力金ですが、一応私はトイレを利用する度に100円を寄付しています。元々入山料徴収構想に賛成の立場なので、何の異論もありませんが、強制ではない以上払わない人がいてもそれはそれで仕方ありません。そこでトイレに入った際にそれなりに人がいる場合は、さりげなく大きな動作で(笑)わざとらしくお金を募金箱に落としてみせます。そうすると慌てて同様にお金を入れる人と、まったく気にすることなく出ていく人とに明確に分かれるのは面白いですね。概ね前者はそれなりの装備を身にまとった山屋さんで、後者は一般観光客に多いように思います。ちなみにカメラマン風情の方々は圧倒的に後者に含まれますね。

余談ですが、100円の文字の後に「程度」と書かれたシールが貼られています。そのせいか時々募金箱の中に1000円札が入っているときがあります。なかなか豪気な人がいるものですが、そう考えると日本もようやく景気が良くなってきたと判断できるのでしょうかね(笑)。

2006年9月22日 (金)

サハリンII認可取消

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サハリン島(樺太)は、冬季に日本に渡ってくるオオワシの重要な繁殖地の一つです。
EOS-1D MarkII N EF500/4L IS
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先日ロシア天然資源省は、シェルや日本の大手商社である三井物産、三菱商事が出資して事業を進めている、サハリンIIプロジェクトの開発認可を取り消したとのことです。サハリンIIプロジェクトとは、極東ロシアのサハリン島で行われている大型の石油・ガス田開発プロジェクト..特に液化天然ガス(LNG)の生産を行う..のことです。

日本は原油等のエネルギー資源の輸入を中東地域に多く依存していますが、昨今の中東情勢の不安定さもありエネルギー安全保障の観点からもその依存度下げるべく、今回のプロジェクトはその上で重要なものと位置付けられています。資源に乏しい日本のエネルギー事情からしても、海外から輸入すること自体至極当然の成り行きと言え、そしてなるべくなら自前の開発によって、他国の影響を最小限にとどめるような枠組みでの開発が望ましいのだと思います。その点サハリンIIは、前述の通り日本の大手商社が中心となって事業を進めるプロジェクトということのようですから、その重要性は推して知るべしです。

ただ、この手の開発事業につきものとして、周囲の自然環境に配慮して事業を進めているか否かという問題(環境アセスメント)があり、サハリンIIプロジェクトにしてもその例外ではありません。実際、極東でも貴重な自然の残るサハリン島東岸を縦断するかのように建設されているパイプラインについては、国内外からその計画の見直しが叫ばれています。オオワシ、オジロワシ、カラフトアオアシシギ、マダラウミスズメ等の海鳥の他、アザラシ等の鰭脚類の貴重な生息地における、パイプラインの施設やプラント建設に伴う工事による瑕疵、もしくは万が一の原油流出事故..知床での油漂着による海鳥汚染問題が記憶に新しい..が懸念されるているのです。

そんな状況での認可取消の報は、国内外で事業反対を訴える関係者に吉報となりましたが、ここで問題なのはその中止理由です。貴重な自然を守ると言った主旨の認可取消..建前上はロシアの環境規制を順守してないからとしている..でなく、エネルギー輸出立国として再生を図るロシアが、エネルギー産業に対する支配力を強化するという政治的且つ戦略的な思惑が絡んでいるようなのです。つまりロシア側の考え方次第でまた計画が認可される可能性があるわけです。

国が国として存続し、人が人として暮らしていくために必要なライフラインとしてのエネルギー輸入問題。それがどうしても避けては通れない問題なのは理解できます。エネルギーが不安無く供給されることの利便性を、末端で享受するのは他でもない我々自身なのですから。しかし、世界に誇れる貴重な自然、そして次世代に残されるべき貴重な生きものたち。そんな沢山の命の行く末が、国家とか企業とかの思惑で左右されそして決められていってしまうことへ、言い表せぬ不安と憤りを覚えるのもまた事実ですね。

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晩秋を迎える頃、サハリンから宗谷岬を経由して多数のオオワシ・オジロワシが飛来、そして知床上空を通過していきます。今年も無事に彼らがグライディングする姿を見ることが出来るでしょうか。出来ればそんな不安を抱くことなく、毎秋、毎冬、彼らと再会したいものです。
EOS 5D EF28-300/3.5-5.6L IS 210mm
F8 1/250 ISO100 Adobe Camera Raw 2.3

2006年7月31日 (月)

梅雨明けと百人の一歩

梅雨がようやく明けました。降るのか降らないのかどっちつかずの空梅雨(北関東での話し)から一転、後半は集中豪雨で各地に甚大な被害もたらした今年の長梅雨。その筋の話しでは今世紀末の梅雨明けは8月後半になるとの予想もあるとか。少々自然が暴れるだけでやれ異常気象だの何だのと大騒ぎするステレオタイプなマスコミの論調には辟易していますが、そうは言っても少なからず地球温暖化の影響があるのも否めませんね。

過去途方もない年月(少なくても近代の人間にとって)をかけて気候の変動..大きく捉えて氷河期と間氷期..があったわけですが、人間がその勢力を伸ばし爆発的に人口を増殖させてきた近代から、本来地球が持つリズムのようなものが崩れてきている..などと素人でも考えに及びます。よく聞く喩えとして、地球が誕生してからを365日とするならば、人類の有史..ここでは約2000年程度と仮定..は大みそかの23時59分59秒から(つまり1秒)だと言われます。温暖化最大の原因と言われる化石燃料を燃やし始めた近代に置き換えるなら、それこそコンマ数秒の世界になるのは言わずもがなですね。何が言いたいのかと言えば、それまでの変化に掛かった時間に比べ、最後..決して地球が滅ぶという意味での最後ではない(笑)..の1秒での変化が大きすぎると言うことです。

やれエコだのスローライフだのとその方面の美辞麗句を目にする機会も多い昨今、まああまりきれい事を言っていたのでは自分たちの生活が立ち行かなくなるわけですが、いきなり立ち止まるのは難しくとも少しずつ歩を緩めることで、地球本来のリズムに少しでも近づけるのはないかと思います。マスコミに踊らされたように難解な横文字を掲げなくとも、ほんの少しでも良いので一人一人がその歩みを遅くしてみてはどうでしょうか。人一人の人生などわずか80有余年。生き急ぐな我が人生、一人の百歩よりも百人の一歩ですね。

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写真はヒルガオ。日中に花を開きますが、夕方には閉じてしまうのでこの名前があります。夏休みの観察日記に利用されるアサガオほど人気がない上に、道端に生えているとほとんど雑草扱いの不遇の花です。この花も昨日の道路愛護(草刈り)で刈られてしまいました。アサガオもヒルガオも地球の一員なのに..ナンテネ(笑)。
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